絵本と童話の世界

kintarou

木箱の蝶

第38回 日産「童話と絵本のグランプリ童話大賞」受賞作品

お父さんの部屋で偶然見つけた木の箱
その中には 夕焼けに似たオレンジ色の とても美しい蝶の羽が一枚入っていた
お父さんが子供の頃には たくさん飛んでいて 今ではめったに見られなくなった
「ウスイロヒョウモンモドキ」という蝶の羽
僕は画用紙と絵の具で沢山の蝶を作った
夕方 机の上に並べられた蝶は 夕日色に染められ
一ぴき また一ぴきと 羽を動かし触覚を動かし
一本のリボンのように連なって 窓の外へ飛んで行った

箱の中から聞こえる「ハタリ」と言う音 金魚のイチ子がはく「ポクリ」という泡の音
蝶とイチ子の静かな会話「ハタリ ハタリ」「ポクリ ポクリ」 オノマトペの静かな世界
優しい物語と優しい色使いの絵
沢山の蝶が窓辺から飛び立ち イチ子のポクリとはいた泡が 水面ではじけて消える
物語も絵も静かなのだけれど 心に残る一冊です