52ヘルツのクジラたち
2021年本屋大賞受賞作品
愛を注ぎ注がれる 魂の番となれるような たった一人の人との出会いを求め
母方の祖母が以前住んでいた 田舎の古い家に越してきた三島貴瑚
しかしそこで出会ったのは 親から「ムシ」と呼ばれ 心身共に虐待を受けている少年「愛」
貴瑚のタブレットに映し出される 52ヘルツで鳴くクジラの動画を 少年は食い入るように見つめる
貴瑚は 虐待を受けて失語症になった少年を 救い出そうと奔走する
殆どのクジラは15~25ヘルツ程度の周波数でコミュニケ―ションをとる
52ヘルツで鳴くクジラの個体は発見されておらず 種類も特定できていないそう
他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴くクジラ
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない 届けられない現実が
ヤングケアラーとして生きてきた貴瑚や 親の壮絶な虐待に合いながら生き延びた愛の
孤独な姿に重なる
辛い物語だが 明日への希望を感じられる読後感に救われる